化物語 バケモノガタリ
- 監督 新房昭之 制作 シャフト 原作 西尾維新
- 2016年10月2日
- 読了時間: 2分
もう、5年くらい前の作品らしいのですが、この続編の「傷物語」シリーズが三部作で制作され公開中ということもあり、にわかに注目されています。実はわたし、今年になるまでこのアニメを全然知らなかったのですが、わたしのホームページで自己紹介用のポートレートを撮ってくれたToshiさんの勧めで原作を読み、アニメを初めて観ました。

緻密な設計のストーリーと、長回しのセリフが独特の世界を作り出す。そしてその世界を引き継ぎ、拡大再生産するアニメの表現が素晴らしい。
特に、オーバースケール気味に描かれた建物や逆光の表現と、そこに現れるやや小さく描かれた人物たちの、アンバランスなプロポーションは、観ている人間をちょっと不安な気分にさせることに成功している。この妖怪物語はそんな舞台表現の中で進行していく。わたしはこのアニメを初めて観たとき、ジョルジョ・デ・キリコの「街の神秘と憂愁」という絵を思い出した。
無機質に増殖していくような街の風景、時々挿入される「赤齣」「黒齣」のテロップ、ちょっと油断すると見逃してしまいそうなユーモア、過去のマンガやアニメ作品からの引用とオマージュ、とにかくすべてがわかってる感と緊張感に充ち満ちている。
最近公開された、新海誠監督の「君の名は。」でも、緻密な風景描写が話題になっているが、日本のアニメ作家や制作会社の表現ボキャブラリーの豊潤さには驚くばかりである。
ひとつひとつの画像がキリコの表現レベルを軽々と飛び越えた緻密さでシャープに描かれ、更にそれら密度の高い画像の秒何コマという連続の膨大な総体としてひとつのアニメ作品が出来上がる。なんという贅沢。
ミケランジェロや尾形光琳が実践した多数のスタッフによる工房スタイルのプロダクション方式。~現代ではアニメ業界がそのスタイルを引き継ぎ、膨大なエネルギーが注ぎ込まれ作られた作品は、高いレベルを保持している。
豊潤なボキャブラリーを持つ表現者と、それを展開可能ならしめるプロダクション・システムと、そして、それらと同時代に生きる幸運のなかに、ぼくたちはいる。
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