ソニア・リキエルのスーツ

今年も、多くの惜しい方が亡くなられましたが、むかし一緒に仕事させていただいたソニア・リキエルさん(Sonia Rykiel, 1930年5月25日 - 2016年8月25日)について書いて、今年の最後を締めくくりたいと思います。

 

1993年の5月、ファションショーの仕事があり、青山スパイラルホールでご一緒した。この仕事では人のつてを手繰って、彼女の他にダナ・キャランとクリツァのマリウッチャ・マンデリの3名のファッションデザイナーの同時来日の調整・手配をした。事前準備がけっこう大変だったのだけれど、もちろん本番ではステージ上の演出はクリエイターの領分なので、私は会場運営とスポンサーまわりのケアをしていただけ。と、言うもの、そもそも自分の中のどこかにこの仕事に対して、”女性のファッションなんて、オレ、わかんね~よ”という冷めた気分があり、スノッブな業界人のノリにもなじみにくかったこともあって、演出的なことは”アウト オブ myマター”を決め込み、事前準備を精いっぱいやって、本番になだれ込んでからはベテランのホテルマンのように淡々と現場の準備をしていたのだが、リハーサルで彼女のコレクションを観て、吸い込まれるように見入ってしまうことになる。 ~ ものすごく、感動してしまった。

 

本番前日の深夜、現場の準備を終えてから、業界人向けに深夜営業してくれている青山ブックセンターにタクシーを走らせ、彼女の本を購入。 翌日、スタッフに頼んでも良かったのだがせっかく本人が目の前にいるので、英語もフランス語もしゃべれないのに本番前のちょっとした時間に自ら彼女を捕まえてサインをお願いした。

その際に、”あなたのデザインは、気高くに見えてかわいらしく、ストイックに見えて豊かで、哲学的だけど遊びがある。矛盾した内容が自然に一体化している様に、私は感じた。”みたいなことを、カタコトの英語で一生懸命話したら、こんな抽象的な内容がなんとか通じた様で、オーラ満載の魔法使いの様な風貌のソニア先生、静か笑って”THANK YOU”と言って、軽くおじぎをしてくれた。 ~「あなた、チョッと分かってくれてるみたいね。」的な。

この、世界的なデザイナーと直接コミュニケーションできたことで、豊かな才能のあるクリエイターのパワーを感じ、自分もエネルギーをもらえた気がした。 ~優れたデザインは多様な解釈を可能にする。~ ものづくりに関わるわたしには、貴重な体験となった。 

 

翌日、青山の裏通りにあった RIKYEL HOMME 本店に向かい、三つボタンのコットンスーツを注文した。30万円で。で、ちょうどその年の5月28日、34才の誕生日に受け取った。以来23年間、このスーツはわたしの勝負服である。修理に修理を重ね満身創痍だが、ここ一番のプレゼンなどには、必ず着ていく。~「ソニア先生、わたしにパワーを下さい」と。

そういえば、この28日のCICADAのライブにも着ていったナ。

 

クリエイターの命は尽きても、その作品や、もっと言うとその作品から受けた感動は、この世に、人のこころに、残る。 みなさま、よいお年を。

Please reload

Recent Posts

December 28, 2019

Please reload